「日本酒って、どうやってできているんだろう?」
そんな素朴な疑問をきっかけに、今回は大分県国東市にある萱島酒造有限会社についてご紹介します。
代表銘柄「西の関」で知られる老舗酒蔵。
実際にその背景や酒造りの工程を知ると、日本酒の見方が大きく変わる体験となりました。
100年以上続く“変わらない酒造り”

萱島酒造(かやしましゅぞう)(大分県国東市国東町綱井392−1)の創業は明治6年(1873年)。
100年以上にわたり受け継がれてきたのは、「品質主義」と呼ばれる一貫した考え方です。
ただ流行を追うのではなく、手造りの良さと日本酒本来の旨さを大切にしています。
例えば酒造りにおいては、麹づくりから仕込みまで一つひとつの工程を丁寧に積み重ね、細かな調整を行いながら味を安定させています。
時代が変わっても製法の軸をぶらさず、品質を最優先にする姿勢。
それが、長く愛され続ける理由のひとつだと感じました。

「西の関」に込められた想い
代表銘柄である「西の関」は、明治時代に名付けられました。
「西日本を代表する酒になりたい」
そんな大きな想いを込めて名付けられたこの酒は、単なる地酒ではなく“地域を背負う存在”として造られています。
明治40年に初めて開催された全国品評会では一等入賞。
その後も数多くの受賞歴を重ねており、長年にわたり高い評価を受け続けてきました。
また、かつては品評会用としてしか造られていなかった吟醸酒を「秘蔵酒」としていち早く一般販売したことでも知られています。

これは当時としては珍しい取り組みであり、品質への自信と挑戦の姿勢がうかがえます。
酒造りは“すべてが重要な工程”
日本酒造りは、
精米 → 蒸し → 麹 → 酒母 → 仕込み → 搾り → 熟成 → 出荷
という長い工程を経て完成します。

中でも重要なのが「一麹・二酛・三造り」と呼ばれる考え方です。
麹づくり、酒母づくり、仕込みの順に重要とされており、どれひとつ欠けても美味しい酒はできません。
例えば精米では、米を70%から35%まで削ることもあり、そのために60時間以上かかることもあります。
さらに仕込みでは「三段仕込み」と呼ばれる工程で4日間かけて丁寧に仕込み、約20日間かけて発酵させます。
その間も気温や米の状態は毎年変わるため、杜氏や蔵人たちは経験と勘をもとに細かな調整を行っています。
同じ工程でも同じ味にはならない――その繊細さこそが、日本酒造りの奥深さです。
国東という土地が酒をつくる

酒造りの背景にあるのが、この国東という土地です。
海と山に囲まれた自然豊かな環境に加え、この地には古くから神仏習合の文化が根付いています。
寺院や磨崖仏が点在し、自然への敬いと祈りの心が暮らしの中に息づいてきました。
そうした風土の中で育まれてきたのが、地域の食文化と日本酒です。
国東半島という土地そのものが、酒の味わいを形づくっているともいえます。
地元の食とともにある酒

国東半島は、別府湾や伊予灘に面し、新鮮な魚介類に恵まれた地域です。
古くから、漁のあとや祭りの席で、人々は食事とともに酒を酌み交わしてきました。
その中で育まれてきたのが、「料理とともに楽しむ酒」という文化です。
萱島酒造の酒もまた、そうした日常の食卓の中で磨かれてきました。
主張しすぎず、料理の旨みを引き立てる味わい。
“単体で楽しむ酒”というよりも、
食とともに完成する酒――それが、この土地ならではの魅力です。
日本酒の楽しみ方はこんなにある
実は日本酒は、飲み方によって味わいが大きく変わります。
- 冷酒(5〜15℃)すっきりとした飲み口
- 常温 米本来の旨みを感じやすい
- ぬる燗(約40℃)香りがふわっと広がる
- 熱燗(約50℃)コクや深みが際立つ

同じお酒でも、温度によってまったく違う表情を見せてくれるのが日本酒の魅力です。
さらに料理に使えば旨みを引き出す調味料としても活躍し、
美容や健康面でもさまざまな楽しみ方があるなど、日常に取り入れやすい存在でもあります。
編集後記|日本酒の見方が変わった
今回、萱島酒造の酒造りを知る中で感じたのは、
日本酒は“ただのお酒”ではないということです。
自然、文化、歴史、人の技術――
さまざまな要素が重なって、一つの味が生まれています。
何気なく飲んでいた一杯の背景に、これほどの物語があるとは思いませんでした。
アクセス・基本情報
萱島酒造有限会社
所在地:大分県国東市国東町綱井392−1
公式サイト:https://www.nishinoseki.com/
※本記事は2026年4月現在の公式サイトの情報をもとに構成しています。
最新の詳細は公式サイトをご確認ください。



